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2009年06月10日

[技術調査] わかりやすい現場の基礎知識

大阪府クリーニング研究所 所長 桑野 富夫

繊維性能表を読む(1)綿・麻について

 (社)化学繊維技術改善研究委員会のHP(http://www.kaizenken.jp/)内に一般繊維の性能表があります。クリーニング業が衣類のドクターであるのなら、対象物となる繊維の性能を理解しておくことは不可欠なこと。幸いにもこの繊維性能表にはクリーニングに際して注意すべき繊維の性能が列記されていますが、かなり項目が細かな上に、聞きなれない言葉も多いのが難点ですね。
 この性能表より、クリーニングに関係する部分を抜き出したのが下表で、その中から注意点を探ってみたいと思います。

■天然繊維(綿・麻)
 綿(アプランド)や麻(亜麻・ラミー)について検討してみましょう。
 それぞれの乾湿強力比(%)は綿(102~110)、亜麻(108)、ラミー(118)という数値になっています。これは乾燥時強度を湿潤時強度で割り%表示したもので、100を超えたものは湿潤時の方が乾燥時より強度があることを現します。表の通り、綿と麻のみが100を超える数値となります。このことから、綿や麻だけが濡れた状態で強度が上がる性質を持った特異な繊維と言えます。
 次に標準状態(20℃、65%RH)と高湿度(20℃、95%RH)での水分率の違いを見てみましょう。
 綿は標準時7%(1kgの綿に70gの水分)のものが高湿度時では24~27%の水分を含み、亜麻・ラミーは標準時7~10%の水分を含みますが、亜麻は湿度100%の高湿度状態では23%、ラミーでは湿度100%で31%の水分を含みます。このことから、綿や麻は吸湿性が高い繊維であり、水溶性汚れが付着されやすい繊維であることが想像できますよね。
 次は熱の影響を見ましょう。綿は235℃で分解します。麻は130℃の状態で5時間経過すると黄変し、200℃で分解します。麻を高温でプレスすることは繊維組織を分解する危険性があるということですね。高温を用いるにしても短時間処理が求められるということでしょう。
 耐候性(屋外暴露の影響)も注意しておくべき項目ですね。クリーニングを依頼される衣服は着用中に屋外暴露されています。綿は強さ低下し、黄変する傾向あり、麻は強さほとんど低下しない、と記されています。綿の方が紫外線や水分によって脆化しやすい傾向にあることが想像できます。
 これからはシミ抜きを行う際に特に注意しなければならない酸やアルカリ、その他の化学薬品や溶剤の影響について検討しましょう。
 綿は熱希酸、冷濃酸で分解、銅アンモニア液により膨潤または分解、とあります。これらが意味することは、希釈された酸であっても、蒸気などで過熱された場合や濃酸に触れた場合には繊維が分解されることもあり、銅が溶け出した状態(緑色のシミ)の除去にアンモニアを用いた場合にも分解され穴が開く可能性があることを教えてくれています。
 麻の場合を検討すると、亜麻は酸やアルカリに耐性がありますが、ラミーは熱酸液に侵される傾向にあり、酸と蒸気や熱を併用するシミ抜きは避けるべきでしょう。また麻は酸化剤に対する抵抗性が弱く、過マンガン酸カリウムやオゾン、過酸化水素などを使用する漂白の際には短時間処理を行う必要があります。
 ここまでの内容でも、シミだけを見て作業すると思わぬところに落とし穴があることを理解していただけたでしょうか。次回は羊毛、絹について検討したいと思います。

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