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2006年08月07日
[第3話]『働く』という字
『働く』という字、
これは中国にはない日本だけの
オリジナルなんですね。
「トヨタ方式」の一番基本的な物の考え方というのは、「ふたつのJ」という二本柱があるんです。
ひとつめの「J」というのは「自働」ということです。これはトヨタ系の事業を一番先にやられた豊田佐吉という人が、まだ人力だけで機を織っておる時分に「豊田自働織機」というのを発明きれた。これはおかあさんが大変苦労して機を織っておるところを見て、「なんとか機械で織れんだろうか」と考えて、自分で発明したものです。蒸気機関を使ったもので、当時にすりゃ。何千倍っていう生産性をあげた機械なんですが、この一番の特長は「働」という字にあるんです。
普通、動力でどんどん織るというと、不良がでたら大変なことになる。たとえば糸が一本切れただけでも、どんどん織ってできあがった物はスケスケで、もう商品にもならない。
結局不良品をいくら作っても、働いたことにはならんのです。だから、もし一本でも糸が切れたら、その時に機械が止ってくれりゃ、不良品を作らんでも済む、と考えたんですな。そういうことから、ニンベンの付いた「働く」という字を使ったわけです。
このニンベンのあるなしというのは、非常に大事なことで、「働く」というのと「動く」というのでは、まるっきり違うんです。
ニンベンに動くと書いて「働く」。じゃあ人間が動きゃ「働」になるのかというと、けっしてそうじゃない。牛や馬でも、その動きに人間の知恵を付けて動かせば、これは立派に働いたことになるんじゃないでしょうか。
ですから、人間の知恵がその動きについておるということが「働く」ということだと解釈できるでしょう。
皆さんの会社も同じでね、自分とこの従業員が一所懸命に動いておっても、それが「動」いておるのか「働」いておるのかを見極めることが、非常に大切になってくる。本当に仕事だけやっておりゃ、何も汗かかんでも、外からは鼻歌でやっておるように見えても、そこの会社は儲かっておるかもしれんですからね。ですから会社のトップというのは、もっと自分の部下が「ムダなことはやっとらんだろうか」、「やらんでもいいことに、一生懸命出しておるんじゃないか」と、個々の動きをしっかり見る必要があるんじゃないでしょうか。
昔のテーラーたちがやっておったIEでは「モーション・スタディー」、つまり「動作研究」というのがあったのですが、この「動作」っていうのには「ニンベン」が付いていない。で、この「エンベン」の付いた「働く」という字があるのは、どうやら日本だけらしいんです。
というのは、以前にそのことを知らずに台湾へ行ってあっちこっちで話をした時に、むこうにも「働」の字があるもんだと思って、「ドウはドウでもニンベンの付いた『働』でなきゃいかん」と言ったところが通じない。通訳しとるのが「中国にはこんな字はない」というんですね。それでこっちも話の腰を折られてしまったもんですから、「働くという字がないような国は、産業やってもダメだぞ」って言ったら、みんな笑っとりましたけれども。
あとで帰ってきてから分厚い辞書引いたら「国字」というふうに出とったんで、日本で作った字だということが分かったんです。
「働く」というのと「動く」のとは違うんだという説明は、日本ではある程度できるんですが、外国へ行くと全然できないんですね。ですから、どうも外国人は動いておれば働いとるというように思っとるようです。そんなことで、この「働く」という字があるというのは、こりゃあもう日本の産業が世界一になってもしょうがないと、そう私は思っておるんです。
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