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2006年08月07日

[第5話]もう、大量生産はあきらめねばならない

もう、大量生産はあきらめねばならない
 時期に来ているのではないでしょうか。

 一時「大きいことはいいことだ」というコマーシャルがはやって、困ったもんだと思っとったんですが、とにかく経営規模は大きければいい、売上げは大きいほうがいいということで、目が売上げだけにいってしまっておる。ところが、この売上げなんていうものは関係ないものなんだと思ってもらわにゃいかんのでね。売上げにこだわると、競争が厳しくなるだけなんです。


 それよりも、従業員一人がどれだけ利益をあげてくれておるのだろうか、いくら・会社の利益に貢献してくれとるんだろうかということに重点を置く。で、本当に一人あたりがたくさん稼いでくれておるのだったら、これはもうみんなに還元してやらにゃいかんですわな。
 良い例を挙げると、例の牛どんチェーンがそれです。ある場所に牛どん屋を出した。そうしたら儲かった、というんで次々に店を出す。一店舗でもこれだけ働かるんだから、十店舗出せば十倍働かるというところでしょうな。つまり机の上で算術計算しとるわけです。こんな勘違いもないもんで、実際には店がいかに増えようと宜伝しようと、その場所での客数のはそんなに変りゃせんということを忘れておる。一店舗なら儲かっていたでしょうが、一定しか客のいないところに十店舗出したら、一店当りの儲が少なくなることは当り前です。倒産する会社というのは、大体こんなふうに算術で経営を考えておるところがほとんどですよ。ですから牛どん屋がつぶれたのも、客が減ったからじゃない、今でも牛どんを食べる客は減っていないはずですよ。
 クリーニングも同じことが言えるでしょう。前金だとか、売れ残りがないとか、生活に関連しとるんでなくなりはせんだろうとか、製造業の立場からすりゃ、うらやましいことが多いですが、それにしたって家庭用の電化製品も進歩しとる。うちで洗える物も増えておる。ということで、他の業と同様ますます厳しいことには変りないわけです。ですから今必要なことは、今より仕事量が減っても儲かる方法というのを、絶えず考えておかねばならんということです。しかし、増えることは考えても、減ることを考えておる経営者というのは、こりゃなかなかおらんのでね。
 で、一般の産業界はというと、今でもそうですが、できる物をできる時にできるだけ作るという、大量生産ですな、これはいちばん原価計算上安く物ができるんだと考えておる。そういう考えからすると、いる物をいる時にいるだけ調達する、あるいは作るとなると、えらい高くつく計算になる。百個作りゃ一個あたり安くなるところを、「いや、十個しか売れんから」といって、十個作る。しかも今すぐ欲しいというのですから、計算じゃものすごく高くついたことになるんですね。
 これはクリーニングの皆さんもいっしょで、百枚いっぺんに洗うほうが、十枚洗うよりも一枚あたりの電気代なりなんなりが安くなる。こんなことは当前のことだけれども、これをどうやって百枚洗うのと同じ原価で、あるいはもっと安く洗う方法がないかというようなことを勉強するのが、「トヨタ方式」ということなんです。
 そういった点で、今までの常識をいっべんひっくり返すということも、「トヨタ生産方式」を進める中で、一番大事なことじゃないでしょうか。常識なんてものはよくよく考えれば、可もなし不可もなしなんでね。そんなところからは、なにも新しい発想は生まれんのですからね。
 しかし、大量生産すれば安くできるかというとそうじゃない。量産効果などといいますが、そんなものはありゃせんのでね。売れにゃ何にもならんのですから、量販効果はあるでしょうが、量産効果というものはあれは机の上で計算して出るだけです。もう最近では、需要に対して供給能力が世界的に大きくなっておる。昔はいくら作っても作っただけ売れたのが、今はそうはいかんのでね。じゃあ生産性を上げようというと、今までの考え方で、これまでの半分の人数で倍ぐらいできるような設備したとする。ところが、作るほうはどんどん作っても、消費する方はそんなに物があってもしょうがないんで、かえって「安くないと買わんぞ」ということになる。結局、金かけて売れないはど作り過ぎて、それでも金をまわしてもらわんと困るので、半値でも原価切っても売らにゃならんようになる。したがって現在の企業というのは、たくさん作りゃ作るほど、もっとたくさん作らんと儲からんような、そんなおかしな横道になっておるんじゃないだろうか。まあこれには、会社というのはいろんな点で大きくなりたいと、そう考える経営者が多いということもあるでしょうが。

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