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2006年08月07日
[第10話]どうしたらもっと楽にできるか。
どうしたらもっと楽にできるか。
これは働いておる人、一人ひとりに考えてもらいたいことです。
「トヨタ方式」では「多行程持ち」ということを言うんですが、これは機械を工程順にならべ、その工程の流れにそって仕事を持ってもらう、というようなやり方をしとります。これは人と機械をどうやって組み合わせりゃ、一番良い仕事の組み合わせができるか、これを「標準作業」っていうんですが、そういうのを決めて作業をやる。この「多工程持ち」の良いところっていうのは、人間の働きがフルになるんですね。で、一人でできるだけたくさんの機械を受け持ってもらうようにする。ところが、機械をいっぱい持てなんていうと、なんか機械に振り回されるような気がするらしいんだね。機械っていうのは人間が使わにゃいかんので、機械に使われとっちゃ、とてもこれはいかんことでね。
私も終戦直後、まだ昭和二十年っていう時に、こういうやり方を始めたんですが、ちょうどその時に労働組合ができて、青年部っていうのが私んとこへ五、六十人来て、「あんたは機械に追い回わきれるような仕事のさせ方をしとる」というような文句が出たんですけども。「五台も六台もの機械に追い回されとる」っていうもんですから、「そりゃ考え方まちがっとるぞ」と、「二十台も機械使ってみろ、機械に使われるからいかんのだ」と言ったんです。まあ自動車会社だったために、こんな話したんです。
「あんたら、自動車の運転者になるのと人力車の車夫になるのと、どっちがいいか」と。あの人力車っていうのは、自分が早く行こうと思って走りゃ早く行くしね、止ろうと思うだけで止るんだと。ところが自動車を運転すると、走ろうと思うとアクセル踏まんならん。止ろうというとクラッチ切ってブレーキ踏まんならんのだね。それから人力車だと右へ曲がろうと思えば右へ行くんだけども、自動車はハンドル回さんと右にも左にも回ってくれん。じゃあ、だからといって自動車の運転手は機械に使われとるのかと言うんだね。そんなことはない、それは自分が自動車を使っとるんであって、何も自動車に使われとるからハンドルきっとる訳じゃないんだね。
だから物は考えようで、「機械に使われとる」なんて思うと、仕事が辛いことばっかりになってしまう。おんなじ労力使うんなら、たくさん機械使った方がいいじゃないか、あるいはおんなじ数作るんなら、どうやったらもっと楽にできるかということを、作業する一人ひとりの人に考えてもらうのが、一番いいんじゃないでしょうか。
またこういうことも言える。いろいろ工夫してムダを省いて、人間の働きを百パーセントに近付けようとしても、なかなか百パーセントなんていうことにはならん。せいぜい九十八パーセントも行けばいいほうなんですが、じゃあ機械五台持っても九十八パーセント、十台でも九十八パーセントだとする。これ、ちょっと考えりゃ五台の方が楽のような気がするかもしれんが、実際には同じなんだと。だから一人で三台より五台、五台より十台の機械を持ってもらえばいいんです。
それから一人で仕業するということについても、「そんな、一人でやっとったら能率が上がらん」などという気がするかもしれませんが、人数が多けりゃ能率が上がるかというとそうでもない。仮りに十八秒でやる仕事があったとする。これ、一人でやるというと丁度十八秒になるんだが、二人となると、じゃあきっちり九秒ずつで仕事できるかっていうんだね。そんなものできゃあせんのですから。
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