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2006年08月07日

[第12話]育児もすれば食事も作る。

育児もすれば食事も作る。
 女性というのはもともと立派な多能工でしてね。

 この「多能工」というのは、洗濯もすりゃアイロンも掛ける、シミも抜くというように、流れに沿っていろんな仕事をすることをいうんですが、「トヨタ方式」の中でも、これは
一番やってもらいたいことです。
 大体、男の人にしてみると「多能工」っていうように頭の切替ができんのだね。男はたいてい「専門工」になりたがるんですね。
 この「トヨタ方式」も、日本じゃ今では皆何とも思わずやってくれておるんですけれども、まだ欧米に行くというとどぅしても「専門工」というのが邪鹿をしておる。「多能工」というのが外国じゃできんのです。クリーニングでいうとシミ抜きの人は絶対シミ抜き以外やらん、ということなんです。他の人がシミ抜きやるなんていうと、「オレの仕事取っちゃった」っていってシミ抜きの人に怒られることになるんだね。


 そういったことで外国では「多能工」ができない。
 まあ、「トヨタ方式」やっておらんクリーニング屋さんへ行くとおそらく、水洗は水洗の専門だとか、アイロン掛けはアイロン掛け専門だとか、シミ抜きはシミ抜き専門だとかというふうに、お互いに自分に割り当てられた仕事を精一杯やりゃあ、それで能率が上るなんていう考えになっておる。そうすると種類が多かったり、仕事量が多かったり少なかったりと変動するところでは、「オレはこれだけやった」なんて言って威張ったところで、袋に詰めてお客さんに渡せるようにせんことには、皆がいくら一所懸命やったっていったって、お客きんに渡せるものがひとつもないんじゃ、そこの店っていうのは貧乏するんじゃないでしょうか。
 「専門工」とは、「それしかやらん」という人のことです。「それしかできん」という人は、これは「単能工」というんですが。で、男性と女性と比べるというと、女性の方が「多能工」になりやすいんだね。もともと女性というのは、洗濯やりながら育児したり、料理したりしておる。当り前なんだけども、よく考えりゃこれは「多能工」なんだね。ですからそういう意味では、クリーニングは女性が多いんでその点、楽なんじゃないかと思います。
 外国行くと「職種工」っていって、職種によって最低賃金が決まっておる。アメリカ、ヨーロッパっていうのは労働組合がそういう風に分かれておるので「多能工」がやれない。そういったために、こりゃあ貿易摩擦の元になっちゃっとるけれども、自動車なんかは絶対にアメリカじゃあ安くできんのです。
 溶接というと溶接しかやらん。そのかわりどんなやり方をしとるかというと、一個十秒ぐらいでできちゃう。で、一時間やるというと何百と集めておいて、溶接を一時間なら一時間、そればっかりやる。
 そうすると、溶接のために何百と作っといて、今度は溶接の工場に運んで「これだけ仕事があるから、今日は溶接しよう」というようなことをやっておる。ちょうどクリーニングでいうと、アイロン掛ける人がアイロン掛け一時間いくらだというと、アイロンのところに品物を山のように積んどかんといかんと。乾燥する方は乾燥する方で、手待ちになっちゃいかんということで、洗った品物を山のように積んでおく。そういう仕事のやり方をやっておると、実際には皆汗かいて仕事しとるんだけれども、会社としちゃあ、お金になるものが山のようになっとる。まあクリーニングは前金だそうだから、いくら山のように積んどったって関係ないということになるかもしれんですが(笑)、それにしても皆で一生懸命やっておきながら、なかなかお客さんに渡せるところへ持ってこれんというのは、会社としちゃつまらんことになってくる。というようなことから「トヨタ方式」で一番やってほしいことは、どんな仕事でもその仕事の工程に沿って流れていくということなんですが、一人の人がひとつのことばかりやっとっては働からんのですね。そんなことするぐらいなら何にもしてもらわんほうがええぐらいでね。
 ところが日本人は勤勉で、なんか人に見られるというと、せんでもいいことまでするんだね。そうじゃなくて、することがなかったら「今は機械が仕事しておるんで、自分は何にもすることありませんよ」という気持になってもらえれば良いんですけれども。
 「それしかやらん」というのと「それしかできん」というのは絶対だめなんで、どれでもやれる人になるというのが日本のすべての産業で一番大事なことになるんじゃないでしょうか。

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