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2006年08月07日

[第14話]新しい人が入ったら、正しいやり方を覚えるまで

新しい人が入ったら、正しいやり方を覚えるまで
 上司は根気良く指導せんとね。

 これはまあ昔から言われとることですが、教育とは新しい知識を教えることであると。で、訓練とは知識で知っていることを体得し実践できるようにすることだ、というように教育と訓練とは違うんですが、この訓練ということが今の時代、どうも忘れられておるような気がします。
 じゃあ実際にどんなふうに人に仕事を覚えてもらうか、ということが問題になりますわね。戦後われわれが習った「TWI」っていうのでは、新人が入ったらまず職長が教えなさいといっとるんです。で、何でもいい、仕事で分からんことがあったら必ず職長に聞きなさい、そのかわりとなりの人に開いちゃいかんぞと。これ何でかっていうと、たとえば今日入った人にしてみりゃ、みんなベテランに見える。極端なこと言や、その人にとっちゃ昨日入った人も先輩ですからね。そんなもん、そんなもんと言っちゃ悪いかもしれんが、そんなんに聞いとっちゃ、相手によって話が一定せん。ええかげんなこと言われたら、こりゃ大変だからね。正しいやり方というものを最初に覚えてもらわにゃいかんのだから、必ず職長にたずねさせるんです。


 それからもうひとつ、仕事の与え方という問題もある。よくあることですが、ここまでできたら次、それができたら別のものというように、部下に対して順々に仕事の範囲を広げていく。こりゃあいかんのだね。やっとる方はというと、「いったいどこまでやりゃ、自分は一人前なんだ」ということでうんざりしてしまう。じゃあどうするかっていうと、最初にここまでできれば一人前、というようにその人の仕事の幅を決めてやるんだね。みんなが、その一人前になって自分の仕事の範囲をちゃんとできりゃ、それにこしたことはないが、簡単にそうはいかん。ということで、われわれでは「応受援」ということをやっとります。
 かりにこんなふうに二人に仕事を持ってもらうとする。次の図・Aは二人が一人前になったときの仕事の持ち方ですが、実際には個人差があってのみ込みの速さに違いがある。現実にもよくあることですが、こういう場合どうするかというと、この二人の作業のあいだにバトンタッチゾーンを作るんです。仮りにAさんのほうがのみ込みが速いとしたら、図・BのようにAさんにこのバトンタッチゾーンでBさんの仕事を応接して手伝ってもらう。ここで大切なことは、Bさんに「あんたは、Aさんに手伝ってもらっとるんだぞ」と、「手伝ってもらわんでもええようになったら、一人前だぞ」ということを、最初に知らせておくんですね。こうやって仕事を覚えてもらう。それでもなかなかよう覚わらん、なんていう人も実際にゃあるでしょうが、これはもうしょうがない。辛抱強く教えるということが大事なんじゃないでしょうか。
 それからまあ、普通の仕事でもそうですが、今までと違う何か変ったことをやるというと、社員からの抵抗が強い。これが「トヨタ式」で今までとまったく反対の、いるものをいるだけいる時に、しかも後工程が前工程に引き取りに行くんだなどというと、こりゃもう抵抗が多くてあたりまえだと。しかし実際には、最初の抵抗が強ければ強いほどあとから意見が多く出るんでね。「トヨタ方式」がうまくいくかどうかというのは、そういった点でも会社のトップのやる気にかかっておるんです。
 最近はビデオという便利なものがあるんで、これをうまく使うというのも、作業者を指導したり改善の効果を確認したりするのに大切なことだと思います。たとえばどっか作業手順を変えたとする。そういう時には改善前の作業の様子を、時間表示入れて撮っとく。で、次には改善した作業の仕方を同じようにして撮影する。この二本のテープの頭を揃えて再生して、作業者に両方いっぺんに見せると。そうすりゃ何分何秒かかったか画面に出ておるんで、こりゃもうどっちの方が工数減ったかなんていうことがすぐ分かる。これをいくらやっとる本人に聞いたって、今まで慣れとる方が楽に決まっとるんでね、こういうのは数字で結果見せると納得するんだね。
 それからビデオ撮るというと、大抵変なことやっとるのが映る。しかしこれも、やっとる本人にとっちゃどんな変なことやっとっても、一生懸命やっとるんだから、そういうビデオ撮ったら社長だけ見て文句言うんじゃなく、その作業しとる本人と一緒に見るということが大事です。

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