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2006年08月06日

vol.11「下座の行とクリーニング゙経営」

洗い放談
「下座の行とクリーニング゙経営」

 この間、緑あって一燈園スワラジ劇団の劇を見た。この劇団はもう三十五年にもなる。劇の上手下手はさしおいて、どこかコツンとくるような感動を劇中に与えてくれる。私はこの感動が好きで、それを期待して忙しいさ中に観劇したものである。
 一燈園精神というか、信仰がこの劇団の筋金で、それが折りにふれて観劇者の魂を打つ。一燈園といえば西田天香さんで知られる。ことし九十五歳である。控え室でじっと見ていたが、面会者に握手の手を差し伸べておられた。握手された人は光栄、生きがいを感ずるのであろう。みんな明るい笑顔であった。

 一燈園といえばザンゲと便所掃除で知られる。自分の過去を神の前に告白するなんてくだらないと思う人もあろう。しかし常人もザンゲはしているはずだ。その一例が色ザンゲだ。異性に過去の色ザンデをするようになると、ほんとうに相手にほれているといわれる。まだサンゲをしないで、よくみせようというのはほれていない証拠だ。ザンゲはどうやら誠に通ずるものがあるらしい。信仰とザンゲ―当然のコースだと門外カンにも思える。
 筆者は生来、便所掃除とフロたきが好きにできている。講演出張が多くて、この趣味が満たされぬわけだが、ヒマができると朝でも夜でも、ここへつい足が向く。わが家の風呂のたきばと便所とが向い合わせとくるから、火をたくひまに風呂の湯水を使って便所掃除と相成る。さしあたり一燈園のアウトサイダーみたいなものである。
 一燈園ではこうしたことを"下座する″と表現し、「下座するということは物の栄える根本」と汲みとっているようだ。私が便所掃除が好きだから、講演が紫盛するとは思わない。もう講演はできるだけお断わりして、若い業界人の読む著述に熱中したいのが本心なぐらいだからこのほうは繁盛しなくてもいい。
 しかしある県下一のクリーニング屋さんは、もうイン居していい年なのに、毎朝早く起きてボイラーの用意をし、社員がくるとすぐ作業にかかれるようにしている。また某工場では社長も専務もひまがあれば洗い場でも仕上げ場ででも働く、そしてますます繁盛している。これが下座する心構えというものにちがいない。  だがクリーニング屋さんで、月商五十万円にでも達すると、この下座をきらい、上座のくらしにつきたがる。それも人生をエンジョイする意味でいいことだが、商売のシンがとまってトウがたち出すと、エンジョイとやらも長くはつづかぬはずである。信仰と便所掃除、いや企業と結びつけても、なにやらその気分がわかるような気がする。

著作:全国ドライ新聞社

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